ピアノ録音(レコーディング)におけるマイキングを解説。おすすめのマイクも紹介。

音響機器の基礎知識

ピアノは音域が広く、楽器自体が大きいため、バランスの取れた音を録音することが難しい楽器の1つです。

本記事では、「グランドピアノ」「アップライトピアノ」に「アコーディオン」を加えた3種類の鍵盤楽器について主なマイキング例を解説します。

グランドピアノのマイキング

グランドピアノはサイズが大きく、マイキングの選択肢も豊富です。本章では9つの配置について解説します。

① 中央の弦から上方へ30cm、ハンマーから水平に20cm離してマイクを設置。屋根は全開か全閉。
自然でバランスの良い音質。環境音や周囲の不要な音が少ない位置です。マイクをハンマーから離していくと、アタック音や機械音が減少します。同一点方式のステレオ録音にも最適な位置です。

② 高音の弦から上方へ20cm、ハンマーから水平に20cm 離してマイクを設置。屋根は全開か全閉。
自然でバランスが良く、やや明るい音質。ステレオ録音の場合、もう1本のマイクを低音弦の上方へ同様に設置します。この配置でステレオ録音した音源をモノラルにした場合、位相キャンセルが発生する可能性があるため注意しましょう。

③ サウンドホール(フレーム外縁部にある複数の孔)へ向けてマイクを設置する。
周囲の不要な音を良く抑えられる位置です。細く、ぼんやりとした、詰まった感じの音質となり、ロックなどには適する場合があります。中低域と高域をイコライザーで上げると、より自然な音質になります。

④ 中央の弦から上方15cm、ハンマーから水平に20cm 離してマイクを設置。屋根は半開。
ぼんやりとして低域が強く、アタック音がない状態の音で収音されます。周囲の不要な音が少ない位置です。イコライザーで低域を下げて高域を上げると、より自然な音質になります。

⑤ 全開にした屋根の底面中央部分に接するようにマイクを設置する。
低域が強く豊かな音質。設置したマイクが目立ちません。

⑥ ピアノ下部にマイクを設置し、上方の響板へ向ける。
低域が強く豊かだが、ぼんやりとした音質。設置したマイクが目立ちません。

⑦ 表面取付(サーフェスマウント)型マイクを高音弦の低域寄り上方、屋根の底面に設置する。
明るく、バランスの良い音質。水平方向にハンマーへ近づけると明るい音質に、ハンマーから離していくと柔らかな音質になります。周囲の不要な音を抑えられます。設置位置を適切にするためには、屋根の開け方やマイクの位置を変えて試してみる必要があります。

⑧  2本の表面取付(サーフェスマウント)型マイクを屋根の鍵盤側の端、鍵盤両端からそれぞれ1/3 の位置の屋根底面に設置し、屋根は閉じる。
明るくバランスの良い音質でアタック音が強く、周囲の不要な音を良く抑えられます。低音側のマイクを鍵盤から15cm動かすと、低音弦の音質がより正確になり、ダンパーの雑音も抑えられます。2本のマイクをそれぞれ少しだけ外側に向けると、中域の収音範囲が重ならなくなります。

⑨ 表面取付(サーフェスマウント)型マイクをフレームや側板の内側、または側板の頂点部分の近くへ垂直に設置する。
豊かで自然な音質。周囲の不要な音やハンマー、ダンパーの雑音も良く抑えられる配置です。⑧の2本の表面取付型マイクを使う場合と組みあわせると、より良い結果が得られます。

アップライトピアノのマイキング

アップライトピアノはグランドピアノと比較すると、形状的にマイキングの選択肢は少ないですが、設置位置を工夫することで、さまざまな質感の音を収音することができます。

本章では7種類のマイキングについて解説していきます。

① 屋根を開け、高音弦の上方近くにマイクを設置する。
自然な音質ですが、低音の深みはありません。ハンマーのアタック音も収音されます。マイクが1本しか使えない場合に適しています。

② 屋根を開け、低音弦の上方近くにマイクを設置する。
やや豊かで太い音質。ハンマーのアタック音も収音されます。ステレオ録音の場合、もう1本のマイクを高音弦の上方へ同様に設置します。

③ ピアノ本体内側の上部、低音弦および高音弦の近くにマイクを設置する。
自然な音質。ハンマーのアタック音も収音されます。ハウリングのおそれが少なく、周囲の不要な音を抑さえやすい位置。ステレオ録音にも適用できます。

④ ピアノ背面にある響板の低音側から20cm離してマイクを設置する。
豊かでやや太い音質。ハンマーのアタック音は収音されません。⑤の設置方法と合わせて、ステレオ録音することができます。

⑤ ピアノ背面にある響板の高音側から20cm離してマイクを設置する。
薄く詰まった感じの音質。ハンマーのアタック音は収音されません。④の設置方法と合わせて、ステレオ録音することができます。

⑥ 響板が部屋に面していて床面が固い場合、ピアノ背面の響板の中央から30cm 離してマイクを設置する。床面がカーペットの場合は、ピアノの下に30cm 四方の板を置く。
自然で存在感のある音質。床面からの振動を減らすには、マイクに振動が伝わらないようにするショックマウント機能を備えた低めのマイクスタンドを使用しましょう。

⑦ 上前板(正面上部の板) を取り外し、ハンマーから5〜10cm 離してマイクを設置する
明るい音質。ハンマーのアタック音も収音されます。ステレオ録音の場合、低音弦と高音弦の2か所にマイクを設置します。

アコーディオンのマイキング

① 正面中央から30~60cm離してマイクを設置する。
豊かで自然な音質。マイクを2本使える場合はステレオ録音するか、低音部と高音部に分け、それぞれを収音します。

② アコーディオン内部に小型マイクを設置する。
中音域が強調された音質。周囲の不要な音を抑えやすい位置で、演奏者が動き回ることができます。

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