普段の生活ではあまり聞きなれない「インピーダンス」。楽器を演奏する方、音響機器を取り扱う方にとっては非常に重要な要素です。
インピーダンスを理解することで、楽器と音響機器を正しく接続し、スピーカーやアンプから適切な音量を出力することができます。本記事では、インピーダンスについての基礎知識や注意点を解説します。
インピーダンスとは

インピーダンスとは、交流電流に対する抵抗を意味する言葉です。表記する際にはΩ(オーム)という単位を用います。
楽器と音響機器を接続する際は、それぞれのインピーダンスが一致していると効率よく電気信号を伝達することができます。逆にインピーダンスが大きく異なると、電気信号を正確に受け渡すことができず、音が出なかったり、音質が変化してしまったりすることがあります。
ギターやベースは出力インピーダンスの高い「ハイ・インピーダンス」の楽器です。そのような楽器を接続するために作られているエフェクターやアンプは、ハイ・インピーダンス出力の楽器を接続する前提で設計されており、直接接続しても問題はありません。

一方、ミキサーやスピーカーの入力はインピーダンスの低い「ロー・インピーダンス」の機器に合わせて設計されているため、ハイ・インピーダンス出力の楽器を直接接続すると音が極端に小さくなったり、音質が変化してしまったりすることがあります。
このように、問題が発生する組み合わせや条件を理解し、発生した問題に対して適切に対処することが重要です。
ロー出しハイ受け

楽器と音響機器の接続に際しては、「ロー出しハイ受け」という原則があります。これは「出力(楽器)側のインピーダンス<入力(音響機器)側のインピーダンス」という状態を表した言葉です。
楽器と音響機器におけるインピーダンスの関係を表でまとめると、以下のようになります。
楽器 | 音響機器 | 音への影響 |
---|---|---|
ハイ・インピーダンス | ロー・インピーダンス | 影響あり |
ロー・インピーダンス | ロー・インピーダンス | 影響なし |
ハイ・インピーダンス | ハイ・インピーダンス | 影響なし |
ロー・インピーダンス | ハイ・インピーダンス | 影響なし |
表を見ると、音響機器の入力インピーダンスが楽器の出力インピーダンスより高ければ、問題は発生しないことがわかります。
このような法則から「ロー出しハイ受け」という言葉が原則として用いられています。楽器と音響機器を接続する際は「ロー出しハイ受け」になっているかを意識するようにしましょう。
インピーダンスを合わせる方法

前章で「ロー出しハイ受け」を原則とする旨を解説しましたが、使用する機材の組み合わせによっては原則通りにいかないこともあります。
その場合、楽器の出力インピーダンスをロー・インピーダンスに変換することで「ロー出しハイ受け」の状態を作ることができます。本章ではインピーダンスを合わせる方法について解説します。
DI(ダイレクト・ボックス)

楽器から出力された信号のインピーダンスを変換する方法として、DI(ダイレクト・ボックス)がよく用いられます。DIは以下の2つの役割があります。
- インピーダンスを変換する
- アンバランス接続をバランス接続に変換する
インピーダンスの変換は、楽器から出力されたハイ・インピーダンスの信号をロー・インピーダンスに変換する役割を担います。加えて、DIはアンバランス接続をバランス接続に変換する機能を有しています。
アンバランス接続は、ギター・ベース・キーボードなどの楽器で使用される接続方法です。バランス接続と比べるとノイズの影響を受けやすい傾向にあります。

近くのギターアンプに接続するなど、近距離であればアンバランス接続で問題はありません。しかし、ライブハウスのようにステージからミキサーまで距離がある環境では、アンバランス接続を使用するとさまざまなノイズの影響を受けてしまいます。
DIを介して、アンバランス接続からバランス接続に変換してミキサーへ送ることで、ノイズを抑制したクリアなサウンドを送ることができます。
BEHRINGER【GI100 ULTRA-G】ダイレクトボックス
コンパクトながら堅牢なアルミシャーシを採用したダイレクトボックス。Behringer OT-1トランスを採用し、極めてフラットな周波数特性を獲得しています。Jurgen Rathデザインの4×12インチキャビネットのエミュレーターを搭載しているため、多用途に使用可能です。
エフェクター・プリアンプ

音作りで利用するエフェクターやプリアンプは、ロー・インピーダンスに変換して出力する仕様の製品が多いです。この仕様のエフェクターやプリアンプを挟んでミキサーに接続すれば、インピーダンスによる問題は発生しません。
エレアコに搭載されているピックアップは、プリアンプを内蔵したアクティブタイプが主流ですが、このプリアンプがエレアコの出力をロー・インピーダンスに変換する役割も担っています。

そのため、エレアコとミキサーを直接接続しても問題は発生しません。
【補足】プリアンプを内蔵したピックアップをアクティブ・ピックアップ、内蔵していないピックアップをパッシブ・ピックアップと呼ぶ
ただし、ライブハウスではステージからミキサーまで距離がある場合が多いため、アンバランス接続をバランス接続に変換できるDIを使用することが多いです。
ミキサー・オーディオインターフェース

ミキサーやオーディオインターフェースは、ロー・インピーダンス出力の機器に合わせて設計されていますが、ハイ・インピーダンス出力の機器を接続するための端子を用意している製品があります。
Soundcraft Notepad-8FXはXLRと標準フォーンの複合型端子を搭載していますが、Hi-ZスイッチをONにすることで、ハイ・インピーダンス出力の楽器を直接接続することができます。

ギターやベースを直接ミキサーやオーディオインターフェースに接続する場合は、取扱説明書などで製品の仕様を確認し、ハイ・インピーダンスに対応した端子に接続するようにしましょう。
Soundcraft【Notepad-8FX】アナログ・ミキサー
上位機種譲りの高品位なマイクプリアンプを採用。広いヘッドルームと低ノイズはもちろん、Soundcraftならではの暖かみのあるブリティッシュ・サウンドを継承しています。