PA用のスピーカーやミキサーなどの音響機器には、多様な接続端子が備えられており、機器に合わせたケーブルを用意する必要があります。さまざまな音響機器を接続するため多様なコネクターが存在し、使用可能なケーブルも複数存在します。
機器に適合しないケーブルを使用すると、ノイズや機材の故障の原因にもなるため、ケーブルの種類や対応する機材を理解することは非常に重要です。
本記事では、ライブやイベントで使用するケーブルの種類とその使い分けについて、初心者向けに解説します。
ライブやイベントで使用するケーブルとは

楽器や音響機器の接続では、ケーブルの中心に金属製の芯線が入った「シールドケーブル」を主に用います。
シールドケーブルは、ケーブルの中心にある金属製の芯線を使い、楽器や音響機器からの電気信号を送受信します。ケーブル内部では金属の網(シールド)で芯線が覆われており、外からのノイズ混入を最小限に抑えます。
シールドケーブルは、ギターやキーボードなどの楽器に使用されるだけでなく、マイクやスピーカーなどの接続にも使用されます。

また、シールドケーブルは両端についているコネクターの名前で呼ばれるのが一般的です。

そのため、同じシールドケーブルであっても、さまざまな名称のケーブルが存在します。次章では、よく使われるコネクターの種類と特徴を解説します。
フォンコネクター

楽器と音響機器との接続で、最もよく使われるのが「フォンコネクター」です。両端がフォンコネクターで構成されるケーブルをフォンケーブルと呼びます。
【補足】フォーンケーブルと呼ばれることも多い
19世紀に電話交換機用に開発された経緯から、「フォン(Phone)」コネクターと呼ばれるようになったのが名前の由来です。
フォンケーブルは、抜き差しが容易で使いやすい点が特徴で、ギター、ベース、キーボードなどの楽器との接続によく用いられます。
フォンコネクターには、機能やサイズの違いによるバリエーションがあります。本章ではよく使用される、「標準フォンコネクター」と「ステレオミニコネクター」を紹介します。
標準フォンコネクター

フォンコネクターの中で、プラグのサイズが6.3mm(1/4インチ)のものを標準フォンコネクターといいます。楽器と音響機器との接続で、最もよく使用されるコネクターです。
標準フォンコネクターは、主に下表の2種類に分かれます。
TSフォンコネクター | モノラル信号用のコネクター。プラグ先端部分のラインが1本になっている。 |
TRSフォンコネクター | ステレオ信号が扱えるコネクター。プラグ先端部分のラインが2本になっている。 |
TSフォンコネクターはモノラル信号用のコネクターで、チップ(Tip)、スリーブ(Sleeve)の2つの接点で構成されています。

主に、ギターやベースなどの楽器で使用されることが多いですが、TSフォンコネクターでの接続はアンバランス接続となるため、ノイズの影響を受けやすいです。
【アンバランス接続】HOT(ホット)、GND(グラウンド)の計2本の電線を使用して信号を送る伝達方式。外部からのノイズの影響を受けやすい。
ケーブル距離が長くなる場合は、バランス接続に変換するなどの対策を検討しましょう。
TRSフォンコネクターは、チップ(Tip)、リング(Ring)、スリーブ(Sleeve)の3つの接点があり、ステレオ信号も扱うことができるコネクターです。

TRSフォンコネクターは、主にヘッドフォンの接続に使用されますが、ノイズの影響を受けにくいバランス接続に対応できるため、機器同士の接続にも使用されます。
【バランス接続】HOT(ホット)、COLD(コールド)、GND(グラウンド)の3本の電線を使用して信号を送る伝達方式。外部からのノイズの影響を受けにくい。
ただし、ステレオやバランス接続で使うためには、プラグとジャックの両方がTRSに対応している必要があります。
プラグは、先端のラインの本数でTSかTRSを判断できますが、ジャックは外からでは見分けがつかないため、機器の仕様表で確認する必要があります。
ステレオミニコネクター

ステレオミニコネクターは、TRSフォンコネクターを3.5㎜に小さくしたコネクターです。一般的なイヤホンに採用されているので、多くの方が馴染みのあるコネクターでしょう。
ステレオミニコネクターは、1本のケーブルでステレオ信号を扱うことができ、コンパクトで場所をとらない便利なコネクターですが、耐久性の面では標準フォンコネクターに劣ります。そのため、ライブやイベントの現場で使用されることはあまりありません。
XLRコネクター

マイクなどの接続に用いられるのが「XLRコネクター」です。アメリカのキャノン(Cannon)社が開発したため、キャノンコネクターと呼ばれることもあります。
【補足】カメラメーカーのキヤノン(Canon)社とは違う企業です。
両端がXLRコネクターで構成されているケーブルを、XLRケーブルと呼びます。また、マイクとの接続で使用されることが多いため、マイクケーブルと呼ばれることも多いです。
XLRコネクターはマイクだけでなく、ミキサーやパワード・スピーカーなど音響機器との接続にも広く採用されていますが、その理由は以下の2点です。
- バランス接続で信号を伝送できる
- コネクター部分にロック機構が付いている
XLRコネクターを用いる大きなメリットは、バランス接続で信号を伝送できることです。バランス接続は、ケーブルを長く引き回しても外からのノイズの影響を最小限に抑えることができます。
大きな会場では、ケーブル距離が長くなることが多いため、バランス接続が必須となる状況が多いです。
また、XLRコネクターはロック機構が付いており、不意にケーブルが抜ける事故を防ぐことができます。

激しいライブステージでは、ケーブルが不意に引っ張られて抜けてしまうことは珍しくありません。XLRコネクターであれば、そうした事故を防ぐことができます。
XLRコネクターには、オスとメスの2つの形状があります。音を出力する側にオス、入力される側にメスのコネクターを使うのが一般的です。

例えば、マイクとミキサーの接続であれば、マイクをメス、ミキサーをオスのコネクターで接続します。
スピコン(スピーカーケーブル)

主に、パワーアンプとパッシブ・スピーカーの接続に使われるのが「スピコン(speakON)」です。コネクターで有名なNEUTRIK(ノイトリック)社が開発したものですが、現在では各社がこのコネクターを採用しており、パワーアンプとの接続で使用される標準的な規格になっています。
スピコンは、パワーアンプとスピーカーの接続でしか使用しないコネクターですが、以下の4つのメリットがあります。
- 用途が限定されており、接続を間違えることがない
- 接点が直接見えない構造で感電の恐れがない
- 扱える電力が大きい
- コネクターは、挿し込んだ状態から回転させてロックする構造で、ケーブルが抜ける心配がない
用途は限定されていますが、その分メリットもたくさんあります。パワーアンプとパッシブ・スピーカーを使用する際は、ぜひ導入を検討しましょう。
FULL-TENスタッフ おすすめのケーブルシリーズ

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おわりに

ケーブルを購入する際に悩むのはケーブルの長さです。ギリギリの長さにしてしまうと、万が一つまずいた時などに、ケーブルが抜けてしまったり、スピーカーが倒れてしまったりする可能性があり、思わぬ事故につながってしまいます。イベントで使用するケーブルは、余裕をもって長めのケーブルを選ぶようにしましょう。
また、ミキサーやスピーカーを組み合わせてPAシステムを構築するには、たくさんのケーブルが必要になります。どの機材にどのケーブルが適合するのか、事前に整理しておくとリハーサルや本番で慌てることがなくてよいでしょう。整理するにはぜひ、本記事を参考にしてみてください。