パワーアンプとは、ミキサーなどから送られた電気信号を、スピーカーで鳴らせるレベルまで増幅するための機器です。
PAシステムを構築するために欠かせない機器であり、接続するスピーカーに適合したものを選択する必要があります。
本記事では、初心者向けにパワーアンプの種類や選び方を解説します。
パワーアンプとは

パワーアンプは、楽器やミキサーなどから送られる電気信号を、スピーカーで鳴らせるレベルまで増幅させるための機器です。一般的なPAシステムでは、ミキサーとパッシブ・スピーカーの間に設置されます。

【パッシブ・スピーカー】パワーアンプを持たないスピーカー。パワーアンプを内蔵したスピーカーはパワード・スピーカーと呼ぶ。
ミキサーは、複数のマイクや楽器から入力された電気信号をまとめて、適切な音量や音質に調整します。
調整された電気信号は、パワーアンプで増幅され、スピーカーに送られます。

選択するパワーアンプによって、出力できる音量や同時に接続できるスピーカーの台数が変わります。
会場やイベントの規模にあわせて、適切な出力のパワーアンプを選択することが重要です。
パワーアンプの種類

パワーアンプは、3種類の異なる形態が存在します。
名称 | 概要 |
---|---|
パワーアンプ単体 | パワーアンプ本来の機能に特化した製品。 |
スピーカー内蔵型 | スピーカーとパワーアンプを一体化した製品。パワード・スピーカーと呼ぶ。 |
ミキサー内蔵型 | ミキサーとパワーアンプを一体化した製品。パワード・ミキサーと呼ぶ。 |
用途や使用する環境によって、最適な形態は異なります。
本章では、3種類のパワーアンプについて解説します。
パワーアンプ単体

パワーアンプ単体タイプは、パワーアンプ本来の機能に特化した製品です。
ミキサーやスピーカーと自由に組み合わせることができるため、システム構築の自由度が高く、現場によってシステム構成を変えたい場合も柔軟に対応できます。
【補足】パワード・スピーカー、パワード・ミキサーとは接続できません。
パワーアンプ単体タイプは、高機能な製品が多数存在し、ラックなどに集約できるため、大規模なPAシステムを構築する際にも採用されることが多いです。
一方、内蔵型と比べると、機材の数が増えるため、システム構成が複雑になりがちです。
加えて、トータルコストも高くなる傾向にあるため、PAシステムを安価かつシンプルに構成したい場合は、以下で紹介する内蔵型のほうが適しています。
スピーカー内蔵型

スピーカー内蔵型は、スピーカー内部にパワーアンプを内蔵した製品で、パワード・スピーカーと呼びます。
パワード・スピーカーは、マイクやミキサーを直接接続して音を鳴らすことができます。

そのため、少ない機材でシンプルなPAシステムを構築することが可能です。
さらに、最初からスピーカーに適したパワーアンプが選定されているので、相性の心配がない点も大きなメリットです。
一方で、パワーアンプを変更できないため、PAシステムの拡張や構成変更には対応しづらいことがあります。
ミキサー内蔵型

ミキサー内蔵型は、ミキサー内部にパワーアンプを内蔵した製品で、パワード・ミキサーと呼びます。
パワード・ミキサーは、スピーカーと直接接続して使うことができます。

パワード・ミキサーは、PAシステムの中で電源が必要となるミキサーとパワーアンプが一体化しているため、電源供給が一箇所で済むことが特長です。
加えて、パワーアンプ単体よりも機材が減るので、シンプルなシステム構成にすることができます。
一方で、パワーアンプを変更できないので、PAシステムの拡張や構成変更には、やや対応しづらいです。
パワーアンプの選び方

パワーアンプは、その性能によって接続可能なパッシブ・スピーカーが決まり、音の最大出力も変わってくるため、PAシステムの構成を決める上で非常に重要です。
本章では、パワーアンプを選ぶ際に確認するべき点を初心者向けに解説します。
PAシステムを拡張する予定はあるか

パワーアンプを選ぶ際に重要となるポイントは、PAシステムの拡張です。
PAシステムを拡張する予定がある場合は、構成を柔軟に変更できる「パワーアンプ単体タイプ」がおすすめです。

パワーアンプ単体タイプは、ミキサーやスピーカーを自由に組み合わせることができるので、あとからスピーカーを追加しやすいです。
逆に、PAシステムを拡張する予定がない場合、パワーアンプと一体化したスピーカー内蔵型やミキサー内蔵型のほうが、システム構成をシンプルにできます。
自身の用途にあわせて、適切なタイプを選択しましょう。
スピーカーの接続台数

パワーアンプは、製品によって出力チャンネル数が異なります。
出力チャンネル数によって、同時に接続できるスピーカーの台数も変わるため、必ず確認しましょう。
パワーアンプの出力チャンネル数に応じたPAシステムの構成例は下表のとおりです。
出力チャンネル数 | 接続するスピーカー例 |
2チャンネル | ステレオペアのメイン・スピーカー |
4チャンネル | ステレオペアのメイン・スピーカー+ステージモニター+サブ・ウーファー、ステレオペアのメイン・スピーカー x2セットなど |
8チャンネル以上 | ステレオペアのメイン・スピーカー+サブ・ウーファー+複数のステージモニター など |
なお、スピーカー同士を接続するパラレル接続を使うことで、1つのチャンネルに2台のスピーカーを接続することもできます。

野外イベントなど、広範囲に音を届けるため複数のスピーカーを設置する場合、パラレル接続によって限られたチャンネル数でも柔軟に対応することができます。
なお、パラレル接続時でスピーカーを増設する際には、後述するインピーダンス値が変化するため注意が必要です。
パワーアンプの出力

パワーアンプの出力とは、アンプからスピーカーに送ることができる電力の大きさのことです。電気信号をどれだけ増幅できるか示す値とも言えます。
出力が高いほど大きな音量を出せますが、以下の2点に注意が必要です。
- スピーカーのインピーダンス
- スピーカーの許容入力
本章では、この2点を細かく解説します。
スピーカーのインピーダンス
スピーカーのインピーダンスとは、抵抗値を指す言葉であり、単位はオーム(Ω)を用います。
抵抗値が大きくなると、電気が流れにくくなり、パワーアンプから送られる出力も下がります。
通常、パワーアンプのスペック表には、4Ωと8Ωのスピーカーに対する最大出力が記載されます。

チャンネル数 | 4 |
チャンネル出力 | (4Ω) 500W+500W (8Ω) 275W+275W |
ブリッジモノ出力 | (8Ω)1,000W |
CROWN XTi1002では、4Ωのパッシブ・スピーカー2台(ステレオ)に対して、それぞれ最大500Wを出力できます。
ブリッジモノ出力とは、ステレオ用に用意された2つのチャンネルを、1つのモノラルチャンネルとして扱い、より高い出力を得るための接続方法です。
XTi1002では、8Ωのパッシブ・スピーカーに対して、最大1,000Wまで出力できます。
なお、スピーカーをパラレル接続する場合、同じインピーダンスのスピーカーを接続すると、合計のインピーダンスは半分の値になります。
例えば、8Ωのスピーカー同士をパラレル接続したパワーアンプの最大出力は、4Ωのスピーカーを接続した場合と同じ値になります。

スピーカーの許容入力
スピーカーの許容入力とは、スピーカーが壊れずに正常に動作し続ける電気信号の大きさを意味します。
パワーアンプから受け取る電気信号が、スピーカーの許容入力を超えていると、スピーカーが破損してしまう危険があります。そのため、パワーアンプの最大出力とスピーカーの許容入力は、セットで確認するようにします。
ここでは例として、HK AUDIO PREMIUM PR:O 10 Xの許容入力で説明します。

許容入力 | 許容入力(RMS):300W 許容入力(PGM):600W 許容入力(PEAK): 1200W |
スペック表をみると、3種類の許容入力があります。それぞれの意味は下表のとおりです。
種類 | 概要 |
---|---|
RMS | 連続して安全に処理できる電力量。定格入力とも呼ばれる。 |
PGM | 短い時間なら処理できる電力量。 |
PEAK | 瞬間的に耐えられる最大の電力量。 |
パワーアンプとスピーカーの組み合わせを考える際は、スピーカーのRMS(定格入力)と近い出力を持ったパワーアンプを選択します。パワーアンプの出力が、RMSの0.8〜1.25倍程度であれば適切です。
HK AUDIO PREMIUM PR:O 10 Xを例にすると、RMSが300Wなので、出力が240~360Wのパワーアンプを組み合わせるのが適切となります。
ここまで選び方の目安について解説しましたが、機種や使用シーンなどによっては判断が難しい場合も多いのではないでしょうか。

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おすすめのパワーアンプ 6選
本章では、FULL-TENのベテランスタッフがおすすめするパワーアンプを6つに厳選してご紹介します。
コスパモデル BEHRINGER KM750
形式 | パワーアンプ単体 |
チャンネル数 | 2 |
チャンネル出力 (1kHz、THD 1%) | (4Ω)400W×2 (8Ω)200W×2 |
ブリッジモノ出力 (1kHz、THD 1%) | (8Ω)750W |
入力インピーダンス | XLR:20kΩ(バランス)、10kΩ(アンバランス) RCA:14kΩ(アンバランス) |
入力感度 | 0.77V/26dB/1.4V ※スイッチ切替 |
入力端子 | XLR、標準フォーンジャック(3P)、RCA |
出力端子 | 4Pスピコン、バインディングポスト |
寸法(W×H×D) | 482×88×317mm |
質量 | 8.5kg |
BEHRINGER KM750は、安価ながらも400W×2(4Ω)で駆動する、コストパフォーマンスに優れたパワーアンプです。
パワーアンプ単体タイプで、PAシステムの構成変更にも柔軟に対応できます。
入力は、XLR、標準フォーンジャック、RCAの3種類、出力にはプロ仕様のスピコンおよびバインディングポストを用意しており、多様な接続方法に対応しています。
加えて、チャンネル個別にDC、ショート回路保護を搭載し、安全にアンプやスピーカーを使用することができます。
高機能モデルCROWN XLS1002
形式 | パワーアンプ |
チャンネル数 | 2 |
チャンネル出力 | (2Ω) 550W+550W (4Ω) 350W+350W (8Ω) 215W+215W |
ブリッジモノ出力 | (4Ω) 1,100W、(8Ω)700W |
入力インピーダンス | 20kΩ(バランス)、10kΩ(アンバランス) |
感度 | 1.4V、0.775V |
出力端子 | 4Pスピコン×2、バインディングポスト |
寸法(W×H×D) | 483×89×228mm |
質量 | 4kg |
世界中のイベントで使われており、多くのエンジニアやミュージシャンから支持を得ているCROWNのパワーアンプ XLS1002。パワフルなDSPと高い出力性能を有した、単体タイプのパワーアンプです。
増幅回路の心臓部には、多数の機能を1つのチップに集積したカスタムIC“DriveCore”を搭載。高い出力性能や優れた音質をキープしながら、本体の軽量化を実現しています。
前面パネルには、バックライト付き液晶ディスプレイを装備し、インジケーターのLEDを含めて、設定によりON/OFFの切り替えが可能。操作性にも優れたパワーアンプです。
パワード・ミキサー BEHRINGER PMP500MP3 EUROPOWER
形式 | パワード・ミキサー |
入力 | モノラル×4(XLR、標準フォーン) AUX(標準フォーン) ステレオCD(RCA) |
出力 | メイン出力:標準フォーン×2 モニター出力:標準フォーン×2 |
EQ | 2バンド(80Hz/10kHz、±15dB) |
パワーアンプ(最大出力) | 250W+250W(4Ω) |
寸法(W×H×D) | 289×108×159mm |
質量 | 3kg |
BEHRINGERのパワーアンプ内蔵パワード・ミキサー PMP500MP3 EUROPOWER。250W(4Ω)×2の高性能パワーアンプを内蔵し、パッシブ・スピーカーと直接接続することができます。
入力は、4つのモノラルチャンネル、2つのステレオチャンネルの8ch構成に加え、USB入力が用意されており、さまざまな機器を接続することができます。
さらに、全入力チャンネルに2バンド・ブリティッシュEQを搭載しており、音質を細かく調整可能。1台で幅広い用途に対応できる、コストパフォーマンスに優れたパワード・ミキサーです。
パワード・ミキサー BEHRINGER PMP500 EUROPOWER
形式 | パワード・ミキサー |
入力 | マイク入力×6 モノラルライン入力×4 ステレオライン入力×12(LR6系統) AUX入力×1 |
出力 | 標準フォーンジャック(2P)×2 |
EQ | 2バンド(80Hz/10kHz、±15dB) |
パワーアンプ(最大出力) | 250W+250W(4Ω) |
寸法(W×H×D) | 289×108×159mm |
質量 | 3kg |
BEHRINGERのパワード・ミキサー PMP500 EUROPOWER。モノラル×4、ステレオ×12(LR6系統)の16ch構成に加えて、AUX入力も搭載した高性能モデルです。
入力チャンネルには、個別に高品位マイクプリアンプを搭載。ミキサー内部には、250W(4Ω)×2のクラスD高性能パワーアンプを内蔵し、クリアな音質をそのままに増幅することができます。
さらに、コンプレッサー、リバーブ、コーラス、フランジャー、ディレイ、ピッチシフターなど、多様なエフェクトを搭載しており、音作りまでミキサー内で完結できます。
パワード・スピーカー BEHRINGER B110D EUROLIVE
形式 | パワード・スピーカー |
周波数レンジ | 45Hz~20kHz |
ドライバー構成 | HF: 1インチ LF: 10インチ |
パワーアンプ | 300W(最大)、クラスD |
入力端子 | XLR×1 標準フォーンジャック(3P)×1 |
出力端子 | XLR×1、バランス |
寸法(W×H×D) | 252×299×483mm |
質量 | 8.1kg |
コンパクトながら、最大300Wを出力できるパワーアンプを内蔵したパワード・スピーカー BEHRINGER B110D EUROLIVE。小規模イベントに最適な、コストパフォーマンスに優れたモデルです。
低域を担当する10インチウーファーと、高域を担当する1インチダイアフラムのスピーカー・ユニットを搭載した2Wayタイプで、迫力ある低域と抜けの良い高音を出力。
本体には、Behringer ULMワイヤレスの接続端子を搭載し、受信部を接続するだけでワイヤレスマイクを使用したPAシステムを簡単に構築することができます。
パワード・スピーカー HK AUDIO SONAR 110 Xi

HK AUDIO【SONAR 110 Xi】
パワードPAスピーカー
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形式 | パワード・スピーカー |
周波数レンジ | ±3 dB: 64 Hz – 18 kHz -10 dB: 59 Hz – 20 kHz |
ドライバー構成 | HF: 1″, 1″ ボイスコイル Low-/mid スピーカー: 1x 10″, 2″ ボイスコイル |
パワーアンプ | 800W(ピーク) |
最大音圧レベル | (ピーク@ 10 % THD): 123 dB ハーフスペース (計算値): 126 dB ハーフスペース |
入力端子 | XLR コンボジャック×2 3.5 mm ステレオジャック×1 |
出力端子 | XLR×1、バランス |
寸法(W×H×D) | 310 x 535 x 300 mm |
質量 | 11.5kg |
PAスピーカー専門ブランドHK AUDIOのパワード・スピーカー、SONAR 110 Xi。優れた音質と多彩な機能を備え、店舗、企業、学校、イベントなど、PAが必要なさまざまなシーンで活躍できるスピーカーです。
内蔵されたパワーアンプは、最大800Wの高出力に対応。強力なDSPを搭載しており、用途や構成にあわせて、出力音質をプリセットから選択できるので、初心者でも簡単にセットアップ可能です。
さらに、Bluetooth対応によりスマートフォンからワイヤレスで音楽再生が可能なほか、専用アプリを使ったリモート操作にも対応。1台で幅広い用途に対応できる、マルチなパワード・スピーカーです。