ライブやイベントなどでマイクを扱う際に、気を付けなければいけない現象の1つがハウリングです。ハウリングが発生すると「ブーン」「キーン」といった音が響き、利用者に不快感を与えるだけでなく、機器の損傷を招く原因となります。
本記事では、ハウリングの原因や抑制する方法について解説していきます。
ハウリングが起きるしくみ

ハウリングはマイクとスピーカーを介して、音がループすることで発生します。具体的には、以下のように音のループが生じます。

- マイクで収音する。
- アンプ、ミキサーで増幅してスピーカーへ送る。
- スピーカーから音を出力する。
- スピーカーから出力した音をマイクが再び収音する。
このようにスピーカーから出た音をマイクが拾うことで、システム全体を音がループすることになり、特定の帯域で音が増幅され、「ブーン」「キーン」といった音が発生します。
そのため、マイクがスピーカーの音を拾わないように工夫することが、ハウリングの基本的な対策となります。次章では、ハウリングを抑制するさまざまな対策について、具体的に解説します。
ハウリングを抑制する方法

ハウリングを抑制するには、マイクがスピーカーの音を拾わないようにすることが基本ですが、多種多様な方法があります。
使用するマイクの本数、スピーカーの位置、会場の設備などに合わせて、適切な対応ができるようにさまざまな対応方法を理解しておくことが重要です。本章では6種類の対策を紹介します。
マイクを正しく使う

間違ったマイクの使い方をすると、ある帯域の音が増幅されたり、余計な音を収音してしまったりすることにより、ハウリングの原因になってしまいます。
まず、ハンドマイクを使用する際は、マイクのグリル下部にあるグリップ部分を持つようにしましょう。

グリル部分を握ると低音域が強調され、ハウリングの原因となるため注意しましょう。

そして、ハンドマイクはグリル先端部分が収音の中心となるため、先端部分を収音したい音源から数cm程度まで近づけます。ボーカルの場合はマイク先端部分を口元から数cm程度まで近づけましょう。

また、周囲の不要な音を収音しないように、カーディオイドのマイクを選択すると良いでしょう。
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マイクとスピーカーの位置を調整する

マイクとスピーカーの位置が近いと、マイクがスピーカーの音を収音してしまいます。そのため、可能な範囲でマイクとスピーカーの距離を離しましょう。距離を離すことが難しい場合は、それぞれの角度を少し変えるだけでもハウリングを抑制できることがあります。
また、ハンドマイクで立ち位置を動く場合、マイクをスピーカーに向けないように意識しましょう。
使用するマイクの本数を減らす

使用するマイクの本数が増えると、周辺音を収音する範囲も広がり、ハウリングが起こりやすくなります。
可能な範囲で、使用するマイクの本数を減らせないか検討しましょう。また、一時的に使用しないマイクはミュートするようにしましょう。
音量レベルを適正にする

マイクの入力レベルが大きいと広範囲の音を拾うため、ハウリングが発生しやすくなります。ハウリングが起きない程度にマイクの入力レベルを調整する必要があります。
また、スピーカーの出力レベルが大きい場合も、同様にハウリングが発生しやすくなります。出力レベルについても、可能な範囲で調整するようにしましょう。
イコライザーで調整する

イコライザー(EQ)は特定の帯域を強調(ブースト)、あるいは減弱(カット)させるもので、ミキサーなどに装備されています。
ハウリングは特定の帯域が増幅され続けることが多いため、イコライザーで原因となる帯域をカットすることで、抑制することができます。
マイクやスピーカーの音量が適正にも関わらず、ハウリングが発生する場合はイコライザーを使って調整するのが良いでしょう。
イヤモニを使用する

ライブハウスなどのステージでは、演者が自身の演奏を聴くために設置するモニタースピーカーの音をマイクが拾うことでハウリングが発生します。

【補足】モニタースピーカーは「ステージモニター」「かえし」「ころがし」などとも呼ばれる
そのため、イヤモニ(インイヤーモニター)を使用して、モニタースピーカーを減らすことでハウリングを抑制することができます。
イヤモニを使うことでハウリングの抑制だけでなく、大音量の中でも自身の演奏を正確にモニタリングできるようになるため、導入するメリットは大きいです。
なお、ステージ上ではイヤモニ用のワイヤレスシステムを併用することで配線を気にせずにパフォーマンスに集中することができます。
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まとめ

ハウリングはマイクがスピーカーの音を収音し、音がループすることで発生する現象です。そのため、まずはマイクの持ち方やスピーカーとの位置関係に注意し、マイクがスピーカーの音を収音しないように意識することが大切です。
その上で、音量レベルの調整、イコライザーやイヤモニの利用といった対策を行うと良いでしょう。
また、ライブやイベントではリハーサルの時間を設けて、事前に確認することも重要です。リハーサルは本番と同じ環境で行い、演者の立ち位置や音量を確認し、ハウリングが発生しないように調整しましょう。