“クイックリリース機構“ ”4段階ラチェット三脚機構”など、独自の革新的機能と豊富なコンポーネントにより、これまでにない利便性と優れた柔軟性を実現した次世代スタンドシステム TRIAD-ORBIT。
2013年の発表以来、世界中のエンジニアから高く評価されており、最近では商用スタジオのみならず、自宅スタジオに導入するミュージシャン/クリエイターも増えています。Suchmosや賽(SAI)で活躍するキーボード・プレーヤーのTAIHEIさんもTRIAD-ORBITを愛用する一人で、『Mok’ Studio』と名付けられた自宅スタジオに、TRIAD-ORBITのスタンドシステムを複数導入。アップライト・ピアノやドラムのレコーディングなどにフル活用しています。
そこでFULL-TENでは、TAIHEIさんの『Mok’ Studio』にお邪魔し、TRIAD-ORBIT導入の経緯とその使用感についてお話を伺いました。
TAIHEI氏のプライベート・スタジオ『Mok’ Studio』
Q1 Suchmos、賽(SAI)、七尾旅人さんとのコラボレーションなど、さまざまな活動をなさっているTAIHEIさんですが、近年は映像作品の音楽も手がけられているそうですね。
TAIHEI:ステージに上がってライブをするのももちろん好きなんですけど、他のジャンルの表現者の方と音楽でコラボするのも、けっこう好きだったりするんです。この前も先輩から誘ってもらい、『拾われた男』というNHKとDisney+が初めて合同で作ったドラマの劇伴制作に参加しました。岩崎太整さんという音楽監督がいらっしゃって、劇中歌やメイン・テーマなど、10曲強くらいに関わらせていただきました。
昨日はホラー・ドラマの音楽を納品しましたし、あとはプロダクトのプロモーション・ビデオ用の音楽も手がけていますね。ニューヨークのKITH NYCというブランドが、徳島のBUAISOU.という藍染職人の皆様とコラボしたときの映像に音楽を付けたり。それとぼくの地元である富山で、ドン ペリニヨンの元醸造最高責任者だったリシャール・ジョフロワさんが創立した“IWA”という酒蔵があるのですが、そのプロモーション・ビデオの制作にも参加しました。リシャールさんが語る動画に音楽を付けたのですが、それはとてもおもしろかったですね。
Q2 そういった仕事は、Suchmosや賽における創作とは別物ですか?
TAIHEI:同じような感じですよ。ミュージシャンではない人とセッションをしている感覚に近いというか。劇伴や映像作品の音楽というと、クライアントからのリクエストに沿って作ると思われるかもしれませんが、ぼくは一緒に作っているという感覚なんです。もちろんクライアントと視点は違うのですが、上手くバランスを取っていくと、一人では絶対に作れなかったものが生まれる。それがすごくおもしろいですね。
それにぼくはそもそも、人の言うことを素直に聞くタイプではないので(笑)。“ここは絶対にこうした方がいい”と思ったらハッキリ言いますし、クライアントの指摘に“なるほど”と思ったらすぐに修正しますし。ただ、ぼくはMIDIを一切使っていないので、修正が入ったら大変なんですけどね。“4秒短くしたい”と言われたら、4秒短く弾き直さなければならないので(笑)。
Q3 MIDIを使わないのはなぜですか?
TAIHEI:昔から生音指向というか、アナログ至上主義なんです。でも、すべて生音でやっていたら、弾く技術が日に日に上がってきて、最近では弾き直すのもあまり苦に感じなくなってきました。映像を見ながら演者さんの動きに合わせて鍵盤を弾いて、テンポの外側にある音楽を表現していくというか。そういった作業は、ライブでピアノを弾くときの表現力にも繋がっていると思っています。だから簡単にできてしまうMIDIを使用していないことが、長い目で見れば自分のためになっているのではないかなと。
Q4 今日お邪魔させていただいているプライベート・スタジオについて教えてください。
TAIHEI:『Mok’ Studio(モック・スタジオ)』という名前なんですが、サンスクリット語で解脱とか自由、解放という意味の単語、“モクシャ(mokṣa)”から名付けました。週に2〜3日は誰かしら来て制作しているので、“ここでは自由にやろうぜ”という意味を込めて。
Q5 昔から宅録が好きだったのですか?
TAIHEI:いや、大学に入った時点ではDAWというものの存在すら知りませんでした。“Appleって何? マックってチーズバーガーのことでしょ?”というレベルでしたから(笑)。
録音という行為に興味を持つようになったのは、SuchmosやSANABAGUN.のレコーディングで良い音を作るにはどうすればいいんだろうと思い、メンバーがイメージしている音をエンジニアさんに伝えるようになってからですね。メンバーはエンジニアさんに、イメージしている音を言葉で伝えていたわけですけど、“クリアではなく、霧がかかったようなモワッとした音にしたい”とか、抽象的な表現でしか伝えることができなかったんですよ。
“ギターは紫色でお願いします”とか。でもそんな表現だと上手く伝わらないので、“アンプは60年代のVOXを使い、SM57を少し離れた場所に立てて、一応アンビも録ってモノステにして、それをこのスタジオのリバーブ・ルームにぶち込んでから奥に配置する。それがアイツの言っている紫色のギターだと思います”といった感じで、ぼくが通訳をするようになったんです(笑)。録音に興味が出てきたのはそれからですね。それで“Suchmosもオレが録ってみるよ”となり、家にスタジオを造ってしまったという感じです。
ミックスはエンジニアさんの表現ですが、録音はミュージシャンとエンジニアさんの共同作業だと思っていて、だから録音までは自分でやろうと。でも、こんな自分でも録音できてしまうのは、一緒にやっているメンバーが皆一流のプレーヤーだからだと思います。たとえ曲が盛り上がっていっても、一定のレンジ、一定の音量で演奏できる人たちなので。だからこそ録音時にゲインを突っ込んで歪ませるといったことができる。そしてそれをエンジニアさんに、“こういうイメージで録りました。あとは好きに遊んでください”と言って渡すと。こういう感じでやり始めてからは、完成までがすごく早くなりましたね。

Q6 レコーディングの段階で、かなり音づくりをするのですか?
TAIHEI:音づくりと言っても、ウチのスタジオはマイクの種類がそんなにあるわけではありませんし、できることには限りがありますから。でも、この曲はヒップホップな感じでいこうとか、生音でジャズっぽく仕上げようとか、そういうことは考えますね。
最終的な音のイメージに合わせて、コンプを通ったときの歪みでちょうどよくなる程度にローミッドを入れておこうとか。他の楽器との棲み分けを考えて、キックはあまり突っ込み過ぎないでおこうとか。本当はもっとマイクの種類を揃えて、いろいろやってみたいですけどね。
Q7 ミックスまではやろうと思わない?
TAIHEI:手を着けたことはあるんですけど、ミックスってプレーヤーとしての練習時間をすべて捧げなければならないくらいの“沼”じゃないですか。完璧な演奏がないのと一緒で、ミックスにも答えがないわけですし。
餅は餅屋だなと思って、演奏者、作曲者が見えていない第三者目線で楽曲に新たな表情をつけていただけることが素晴らしいことだと痛感してまして、ミックスに関しては信頼しているエンジニアさんにお願いしています。
TRIAD-ORBITを使えば床板の共振に負けずに良い音で録音できる
Q1 『Mok’ Studio』では、TRIAD-ORBITのスタンドをご使用いただいています。
TAIHEI:以前は、ごく普通のスタンドを使っていたんです。一時期Suchmosのスタジオがあったのですが、そこで使っていたスタンドを一旦自分が預かって。ずっとそれを使っていたのですが、床板の共振に負けてしまうのが気になっていたんですよね。ウチのような自宅スタジオですと、床板に厚みがあるわけではないので、そのまま使うと何かこうモヤがかかったような音になってしまって……。
ラグを敷いても、ウッド・ベースやキックといったローがある楽器を録ると、どうしても位相がパッとしない。JBLのスピーカーの下に敷くような四角いインシュレーターを買ってみたりもしたのですが、床板の共振対策は本当に大変で、一番苦労していた部分だったんです。
そんなときに旧友から、“こんなスタンドがあるよ”と教えてもらったのがTRIAD-ORBITで、ガンダムに出てきそうな見た目にも惹かれて(笑)、とりあえず試してみたんです。そうしたら、ずっと悩んでいたパッとしない位相が、TRIAD-ORBITで録ると“カッ”と変わって、すごくビックリしましたね。
マイク・スタンドの重さって、こんなに重要なことだったんだっていう。スタンドが軽いから、床板の共振に負けてしまっていたんだということに気づいて、そこからはTRIAD-ORBITを愛用しています。低い場所へのセッティング用のスタンドはまだ持っていないのですが、それ以外はほぼTRIAD-ORBITと言っていいんじゃないかなと。

【T3】ストレートスタンドをベースに【O1-L】ブームアームでライドシンバル、
【IO-GC】グリップクランプ+【IO-A1A】アームでハイハットにセット。
【T3】の下部にクランプ+アームを取り付けてバスドラムに設置。
【T1】ショートスタンドに【O2XY】デュアルブーム+【IO-A2A】アーム x2本でスネアの表と裏にセット。
※マイクの取付けには、ボールスイベル機構による広い可動範囲を持つ【M2】または【M3】マイクアダプタ―を使用。
Q2 お使いの製品を教えていただけますか。
TAIHEI:アップライト・ピアノは、スタンドがT3、ブームはO1-Lという組み合わせで、マイクは左右に立てるので、ステレオ・バーとしてIO-VECTOR、マイク・アダプターはM3を使っています。ドラムに関しては、スネアにはT1とO2XY、ショート・アームのIO-A1Aを2本、マイク・アダプターのM2を2個使って、キックとハイハットにはT3とO1-L、グリップ・クランプのIO-GCを2本、ロング・アームのIO-A2Aを2本使用しています。
TRIAD-ORBITが良いのは、設置スペースを取らないところ。自宅スタジオはスペースが限られていますから、メインのスタンドは1本だけで済むというのが最高ですね。普通のスタンドですと、ブームの余りの部分を避けて通らないといけないので、リンボーダンスみたいになってしまう(笑)。TRIAD-ORBITならば、こんな狭いスタジオでも、ドラマーの出捌けの導線を確保することができるんです。アップライト・ピアノも、ウチは壁付けなので背面にスタンドを立てることはできないのですが、TRIAD-ORBITは片側に1本立てればOKですから。
余談ですが、アップライト・ピアノに関しては最初、筐体のサイドにクランプを取り付けようかなと考えていたんですよ。でも、ピアノはそれ自体が共振している楽器ですから、さすがにそれはダメでした。ウチのピアノは黒塗りではないので、倍音の広がりが凄いんですよ……。黒塗りのピアノだったら、もうちょっと芯が通った音なので、サイドにクランプを取り付けてもいけるかもしれませんけどね。

【T3】ストレートスタンドと【O1-L】ブームアームを組み合わせ【IO-VECTOR】ステレオバーを使用してマイク2本を設置。
マイクの取り付けには【M3】マイクアダプタ―を使用。
Q3 ピアノとドラム以外の楽器でも使用されるのですか?
TAIHEI:少し前に、ここで弦を録ったんですけど、そのときも使いましたね。ヴァイオリンをトップとオン・マイクで録ったのですが、それもメインのブーム1本と途中でワニ(注:グリップ・クランプのこと)をガッチャンコするだけでいけました。ヴァイオリンのトップ・マイクとか、高いセッティングは従来のスタンドだとちょっと怖いんですよ。スタンドを安定させるために、脚の部分に使っていないケーブルを重しとして置いたりしていたんですけど(笑)、TRIAD-ORBITは重量があるので、安心してセッティングすることができますね。
それとウッド・ベースを録るときも使っています。ウッド・ベースは、ピチカートで録るときとアルコで録るときでマイクの種類と位置を変えたいんですけど、TRIAD-ORBITならば最初から両方ともセッティングしておいて、一緒に録れてしまうのが便利ですね。
Q4 約1年前に導入されたとのことですが、率直な使用感をお聞かせください。
TAIHEI:とにかく設置の自由度が高いので、ドラムへのアプローチとかがガラッと変わりました。プロのエンジニアさんって、スタンドの立て方をよく分かっているので、狙った角度に上手くセッティングするじゃないですか。自分も経験を積んで、何とかセッティングできるようになってきたんですけど、TRIAD-ORBITは一度セッティングした後の微調整がめちゃくちゃやりやすいんですよ。
スネアのトップの角度をもうちょっと付けたいとか、ヘリからもう少し離したいとか、スナッピーへの向きを少し変えたいとか、そういった微調整がTRIAD-ORBITだと難なくできてしまう。可動域も大きいので、音のイメージに合わせて、クッと合わせることができるというか。それと大きいのが、そういった微調整をスタンドの位置を動かさずにできてしまうところ。
自宅スタジオはスペースが限られているので、スタンド自体を動かさなくていいというのは最高です。セッティングも楽で、従来のスタンドだったらブーム自体を回さなければならないのが、TRIAD-ORBITならば先端を回すだけで取り付けられますから。

Q5 他に気に入っている点はありますか?
TAIHEI:これを一番最初に書いてほしいんですけど、もう見た目が大好きです(笑)。これはぼくの偏見なんですけど、良い楽器や機材って、音もそうですけど、見た目が良いと思っているんですよ。こんな見た目のスタンド、『スター・ウォーズ』が好きな男の子で嫌いな人はいないでしょう(笑)。LEGOや『Minecraft』が好きな人だったら絶対に気に入ると思います。最初に見た瞬間、“何これ、カッコよ!”と思いましたから(笑)。
Q6 TRIAD-ORBITに対する要望がありましたらお聞かせください。
TAIHEI:今のところ、TRIAD-ORBITの凄い自由度の高さに、自分が包み込んでもらっている段階なので、“もっとこうなったらいい”というところまで行き着いてないですね。使い始めて1年くらいですけど、自分が宅録りでやりたいことはすべてできている。本当に不満はありません。追加でもっと欲しいということくらいです(笑)。
Q7 商用スタジオ向けのスタンドと思っている人もいると思うのですが、宅録にもおすすめできますか?
TAIHEI:宅録を始めて間もない人が最初に買うスタンドではないと思いますが、家でいろいろな楽器を録音している人なら、導入する価値はあると思います。値段は高めですが、すごく頑丈ですし、長い目で見たら高い買い物ではないと思いますよ。
——— 本日はお忙しい中、ありがとうございました。
プロフィール
TAIHEI

富山県氷見市生まれ。
Suchmosの鍵盤奏者。
2013年から2018年までSANABAGUN.に在籍。
クラシック音楽のみならず、ROCK、JAZZ、R&B、HIP-HOPなどの幅広い音楽に習熟。
ルーツミュージックに重きを置き、現代の芸術表現としての音を紡ぐ。
現在、自身がリーダーを務めるバンド’賽(SAI)’の活動に加え、 NAGAN SERVER and DANCEMBLE、劇伴音楽制作 (Disney+,NHK合同制作ドラマ「拾われた男」他)、七尾旅人,STUTS,Rei,Haruyなどのアーティストサポート等、幅広く活動中。
使用機材
■ピアノ
多彩なブームやアクセサリーを取り付けることで、様々な用途に対応するベースとなるストレートスタンド。

マイクロホン、カメラ、ビデオ、ライティング機器等あらゆるマルチメディア機器を5方向(最大同時使用4方向)に設置できるベクトル・バー。

360°×190°の可動範囲で正確かつ安定したマイクの固定が可能。IOクイックチェンジ機構を搭載。TRIAD-ORBITスタンドやブームにワンタッチで着脱可能。

■ドラム|スネア
多彩なブームやアクセサリーを取り付けることで、様々な用途に対応するベースとなるストレートスタンド。

スイベル機構により 2本のブームを自由に角度調整でき、精密かつ安定したセッティングが可能。

取り回しの良い軽量なアルミニウム製。従来のスチール製に比べ、約50%の軽量化に成功。

360°× 190°に角度調整可能。TRIAD スタンドと ORBIT ブームにワンタッチで接続可能。

■ドラム|キック・ハイハット
多彩なブームやアクセサリーを取り付けることで、様々な用途に対応するベースとなるストレートスタンド。

スイベル機構により 360°× 190°の自由な角度調整ができ、精密かつ安定したセッティングが可能。

TRIAD-ORBIT【IO-GC】グリップクランプ(2本)
Synergyシリーズグリップクランプ。ロック機構によりトラスやスタンドに安定した固定が可能。

取り回しの良い軽量なアルミニウム製。395~632mmの延長が可能で、最大2kgまでの機材を取付可能。
