聴きやすいクリアな音で録音するには、対象に対して適切な距離にマイクを設置することが重要です。そして、ボーカル、ギター、ピアノなど録音する対象によって、最適なマイクの距離は異なります。
本記事では、主要な楽器における適切なマイクの距離について解説します。
ボーカル録音におけるマイクの距離

ボーカル録音では、使用するマイクの種類によって適切なマイクの距離が異なります。レコーディングで使用されることが多い、サイドアドレス型のコンデンサーマイクでは、口元から20~30cmほど距離を取ります。

C414 XLIIの音質を受け継ぎながらも、機能を限定することで優れたコストパフォーマンスを実現。ライブシーンにも積極的に活用可能。
この形状のマイクは、収音する振動板(ダイヤフラム)が筐体内に垂直に配置されています。グリル正面部分が口元にくるように、マイクを地面に対して垂直に設置しましょう。
ハンドマイクを使用する場合は、グリル先端部分を口元から数cmくらいに近づけます。

グリル横では、マイク本来の収音性能を発揮できないので注意しましょう。
ボーカル録音では歌い手の表現方法によって、適切なマイクの距離は変わります。上記の距離を基準とし、歌に合わせて適時調整することで、より多彩な表現が可能です。
アコースティックギター録音におけるマイクの距離

アコースティックギターの録音では、求める音質によってマイクの距離や角度を調整する必要があります。よく用いられるのは、マイクを10~20cm離して、サウンドホールの正面に向ける設置方法です。

このマイキングでは低域が強い音質となるため、イコライザーで低域を下げることで、自然な音質になります。マイクの向きをサウンドホールからネック側に動かすことで、低域の強さを調整することができます。
このようにアコースティックギターの録音では、マイクの距離に加えて楽器のどのポジションで収音するかも重要な要素になります。
ピアノ録音におけるマイクの距離

ピアノは音域が広く、楽器自体が大きいため、マイキングの選択肢が豊富です。本章では、グランドピアノでよく用いられるマイキングを2種類紹介します。
① 中央の弦から上方へ30cm、ハンマーから水平に20cm離してマイクを設置。屋根は全開か全閉。
自然でバランスの良い音質。環境音や周囲の不要な音が少ない位置です。マイクをハンマーから離していくと、アタック音や機械音が減少します。同一点方式のステレオ録音にも最適な位置です。

② 高音の弦から上方へ20cm、ハンマーから水平に20cm 離してマイクを設置。屋根は全開か全閉。
自然でバランスが良く、やや明るい音質。ステレオ録音の場合、もう1本のマイクを低音弦の上方へ同様に設置します。この配置でステレオ録音した音源をモノラルにした場合、位相キャンセル発生の可能性があるため、注意しましょう。
【位相キャンセル】
同一の音源を距離が異なる複数本のマイクで収音する際に、音の打ち消し合いが生じる現象
ギターアンプの録音におけるマイクの距離

ギターアンプのスピーカーには指向性があり、角度や距離によって収音される周波数の特性は変わります。
よく用いられるのは、スピーカー・コーン(円錐形の振動板)の中心にマイクを向けて、正面の金属または布のカバーから10cm程度離して設置する方法です。

自然でバランスの良い音が収音できます。スピーカーが床面に近い場合は、マイク用デスクスタンドを使用しましょう。
ドラム録音におけるマイクの距離

ドラムは複数の楽器で構成されているため、基本的にはシンバルやタムなどを独立した楽器として録音することが望ましいです。
限られたマイクの本数で録音する場合、ドラムセット中央、及び演奏者の頭上30cm~1mほどの高さにマイクを設置します。この配置は「オーバーヘッド」と呼ばれており、自然な音質でドラムセット全体の音を録音できます。2本のマイクを交差させてステレオ録音することも可能です。
管楽器の録音におけるマイクの距離

管楽器の録音では、その楽器の特性や形状に合わせてマイクの距離を調整する必要があります。
サックスの場合、マイクを5~15cm離してベル(管先端の開いた部分)に向けます。このマイキングでは、明るい音質になります。ハウリングの恐れが少なく、周囲の不要な音を抑えやすい位置です。

トランペットなどの金管楽器では、マイクを30~60cm離してベルに向けます。

マイクの軸上にベルがあると明るい音質になり、軸上から外すと自然で柔らかな音質になります。1本のマイクで2~3人の演奏を収音できます。