レコーディング、DTMなど、音楽制作する際には、正確にモニタリングできる再生環境は欠かせません。そこで重要になるのがモニターヘッドホンです。
昨今では、音質のクオリティーや快適な装着感から、ゲーム、ライブ配信、動画制作など、さまざまな用途でモニターヘッドホンが使用されています。本記事ではモニターヘッドホンの特徴、選び方を解説し、おすすめの製品を紹介します。
モニターヘッドホンとは

モニターヘッドホンとは、主にレコーディングやライブの現場において、音をモニタリングする際に使用するヘッドホンを指します。
その用途から、極めて正確に原音を再現できるようチューニングされており、低音域から高音域までフラットな周波数特性を目指した設計になっています。また、密閉型のモニターヘッドホンは、小さな音も正確に聞き取れるよう、外部のノイズを遮断する優れた遮音性を有しています。
モニターヘッドホンは、レコーディングスタジオやテレビ局などの制作現場で使用されますが、昨今では、DTMや動画制作が一般的になり、個人で所有される方も多いです。
モニターヘッドホンの選び方

モニターヘッドホンは、レコーディング、編集、サウンドチェックなど、制作に関するさまざまな用途で使用されます。製品によって特性が異なり、適した領域も変わります。
本章ではモニターヘッドホンの種類を紹介し、用途に合わせた選び方を解説します。
開放型と密閉型

ヘッドホンの耳を覆うハウジングと呼ばれる部分には、音を鳴らすドライバーが内蔵されており、ハウジングが開放されたもの、半開放されもの、密閉されたものに分かれます。



ハウジングの開放は、ヘッドホンの音質、遮音性に大きく影響します。開放型、半開放型、密閉型の特性をまとめると、下表のとおりです。
開放型 (オープンエアー型) | 音の抜けが良く、スピーカーで聞いているような音の広がりを感じられる。遮音性は低く、音漏れする |
半開放型 (セミオープンエアー型) | 開放型に近い、抜けの良い自然なサウンド。開放型よりは音漏れが少ない音漏れはどうしても発生すると思われるので「音漏れが少ない」という表現でお願い致します。 |
密閉型 | 遮音性が高く、比較的低音が出しやすい。開放型に比べると高音は出しにくい。 |
開放型、半開放型のモニターヘッドホンは、音の抜けが良く、音場も広いです。また、ハウジングが開放されることで通気性も良く、聞き疲れしにくいため、長時間の編集作業に適しています。一方、遮音性は低く、音漏れするので、レコーディングや外出時の使用には適していません。
密閉型のモニターヘッドホンは遮音性が高いため、周囲の環境に左右されず、音のチェックに集中することができます。音漏れも少ないので、レコーディングや外出時の使用にも適しています。一方、音がこもりやすく、高音の抜けの良さは開放型に劣ります。
理想は開放型と密閉型のモニターヘッドホンを1台ずつ所有し、レコーディングは密閉型、ミキシングは開放型など、作業工程に合わせて使い分けることです。多くのサウンドエンジニアは開放型と密閉型のヘッドホンを両方所有しています。
両方所有するのが難しい場合は、遮音性が高く、万能に使える密閉型のモニターヘッドホンを選択すると良いでしょう。
装着方式

モニターヘッドホンの装着方式はオンイヤー型とオーバーイヤー型の2種類に分かれます。
オンイヤー型 | 耳の上にのせる感覚で装着する。コンパクトで持ち運びやすい |
オーバーイヤー型 | 耳を覆うタイプのヘッドホン。耳を密封状態にするため、音漏れしにくい |

イヤーパットが小さく、全体的にコンパクトで持ち運びしやすいのが特徴です。また、本体が軽量なため、長時間装着していても首が疲れにくいという利点があります。
対して、オーバーイヤー型は、耳全体を覆うタイプのヘッドホンです。

耳全体を包み込むので、遮音性能が高く、音漏れしにくい構造になっています。
オンイヤー型と比べると、耳が蒸れやすいというデメリットはありますが、レコーディングなど遮音性能が重要となる用途では、オーバーイヤー型のモニターヘッドホンが適しています。
リケーブル

リケーブルとは、元から付いているケーブルを取外し、他のケーブルに取り換えることを指します。モニターヘッドホンは、一部リケーブルに対応している製品があります。
リケーブル可能なヘッドホンは、ケーブルが断線した場合も、新しいケーブルへ簡単に交換できるため、より長期間にわたって使用することができます。
また、リケーブルができると、使用環境に合わせて異なる種類のケーブルを使用することができます。例えば、他のケーブルが混在するデスク上では、絡まりにくいカールコードを使用し、ケーブルを床に這わせる場合はストレートケーブルに差し替えるといったような使い分けが可能です。


さらに、モニターヘッドホンの中には無線(Bluetooth)と有線の両タイプで使用できる製品も存在します。

Bluetoothで利用できるヘッドホンは、マイクが内蔵されている製品が多く、日常のリスニングや音声通話の対応も可能です。自身の用途に合わせて、製品を選択しましょう。
インピーダンス

インピーダンスとは電気抵抗を示す指標であり、値が大きいほど抵抗が大きくなり、流れる電気量が減ります。
ヘッドホンにおいて、インピーダンスは再生音量に大きく関わります。インピーダンスが高いヘッドホンは、電気抵抗が大きくなり、結果的に再生音量が小さくなる傾向にあります。逆にインピーダンスが低いヘッドホンは再生音量が大きくなる傾向にあります。
ハイインピーダンスのヘッドホンを使用する場合、接続する機器側で高い出力が必要となるため、スマートフォンやパソコンのヘッドホンアウトでは十分な音量や音質を得られないことがあります。

モニターヘッドホンは、数十Ω程度に収まるローインピーダンスの製品から、300~600Ωに及ぶハイインピーダンスに該当する製品まで幅が広いです。
民生機器でも使用される場合、インピーダンスは32Ω程度の製品を選択すると良いでしょう。
おすすめのモニターヘッドホン 5選
AKG K240 STUDIO-Y3
構造 | セミオープンエアー型 |
感度 | 91dB SPL/mW(1kHz) |
再生周波数帯域 | 15Hz~25kHz |
公称インピーダンス | 55Ω |
イヤーパッド | オーバーイヤー(アラウンドイヤー)、着脱式、合皮製 |
入力コネクター | 3.5mmステレオ・ミニプラグ(金メッキ) |
ケーブル | 着脱式、片出し |
質量 | 230g (除ケーブル) |
付属品 | EK300(ヘッドホンケーブル(3mストレート、OFC)) 標準プラグアダプター(ねじ固定式、金メッキ) |
セミオープンエアー型スタジオヘッドホン AKG K240 STUDIO-Y3。プロが求める音質をハイコストパフォーマンスで実現したモニターヘッドホンです。
プロ用モデルのために開発された独自の「XXLトランスデューサー」を搭載。加えて、緻密に計算されたセミオープンエアー型構造により、極めて抜けのよい自然なサウンドを実現しています。
イヤーパッドは耳全体を覆うオーバーイヤータイプを採用し、ヘッドバンドには装着するだけで長さを調整できるセルフアジャスト機能を搭載。
低価格ながらも優れた音質と機能性を兼ね備えたヘッドホンです。
AKG K271 MkII-Y3
構造 | 密閉型 |
感度 | 91dB SPL/mW(1kHz) |
再生周波数帯域 | 16Hz~28kHz |
公称インピーダンス | 55Ω |
イヤーパッド | オーバーイヤー(アラウンドイヤー)、着脱式、合皮製 |
入力コネクター | 3.5mmステレオ・ミニプラグ(金メッキ) |
ケーブル | 着脱式、片出し |
質量 | 240g (除ケーブル) |
付属品 | ヘッドホンケーブル:3mストレート、OFC(EK300)/ 5mカールコOFC(EK500 S) ベロア製イヤーパッド標準プラグアダプター(ねじ固定式、金メッキ) |
透明感のある自然なサウンドが得られるモニターヘッドホン AKG K271 MkII-Y3。密閉型特有の低域の膨らみを低減する「バスチューブ機能」を内蔵しており、開放型ヘッドホンのような、クリアなサウンドを実現しています。
また、ミュート・スイッチ機能を装備しており、ヘッドホンを頭から外すと自動的に出力をミュートし、音漏れを防止できます。加えて、装着するだけでヘッドバンドの長さを調整できるセルフアジャスト機能を装備しています。
遮音性の高い密閉型を採用しており、レコーディングはもちろん、PAのモニターなどにも最適なモニターヘッドホンです。
AKG K371-BT-Y3
構造 | 密閉型 |
感度 | 99dB SPL/mW |
再生周波数帯域 | 5Hz~40kHz |
公称インピーダンス | 32Ω |
イヤーパッド | オーバーイヤー(アラウンドイヤー)、着脱式、合皮製 |
入力コネクター | 3.5mmステレオ・ミニプラグ(金メッキ) |
ケーブル | 着脱式、片出し |
質量 | 294g (除ケーブル) |
充電時間 | 約2時間 |
充電方法 | USB |
使用可能時間 | 最大40時間 ※使用条件により、異なります ※約10分間音声入力がない場合は自動で電源がOFFになります |
付属品 | ヘッドホンケーブル(約1.2mストレート、約3mストレート、約3mカールコード) 標準プラグアダプター(ねじ固定式、金メッキ) 充電用USBケーブル (micro USB-B→USB Type-A、約1.3m) キャリングポーチ |
Bluetooth対応の密閉型ワイヤレスヘッドホン AKG K371-BT-Y3。無線と有線の両タイプで使用できる、モニターヘッドホンです。
Bluetoothのバージョンは通信範囲が広く、データの転送速度も速い5.0を採用。外出先での簡易なモニタリングなどはワイヤレスで対応し、シビアなモニタリングは有線で行うなど、状況に応じて使い分けることができます。
また、大口径50mmドライバーを搭載し、豊かで輪郭のある低域を獲得。加えて、耳の周囲の形状に合わせて自在に変形する、低反発素材を使用したイヤーパッドにより、密閉性が高まり、原音の迫力を忠実に再現します。
ヘッドホン内部にはマイクを内蔵しているため、ハンズフリーの通話にも即座に対応できます。モニター用途に加えて、普段使いもできる利便性の高いモニターヘッドホンです。
AKG K712 PRO-Y3
構造 | オープンエアー型 |
感度 | 93dB SPL/mW(1kHz) |
再生周波数帯域 | 10Hz~39.8kHz |
公称インピーダンス | 62Ω |
イヤーパッド | オーバーイヤー(アラウンドイヤー)、着脱式、ベロア製 |
入力コネクター | 3.5mmステレオ・ミニプラグ(金メッキ) |
ケーブル | 着脱式、片出し |
質量 | 298g (除ケーブル) |
付属品 | ヘッドホンケーブル:3mストレートOFC、 5mカールコードOFC(EK500 S) 標準プラグアダプター (ねじ固定式、金メッキ) キャリングポーチ |
正確で緻密な描写力を実現したオープンエアー型ヘッドホン AKG K712 PRO-Y3。
独自のハウジング構造を採用し、目の前で演奏を聴いているかのような広い音場と、正確な定位を実現。加えて、新開発の高性能ドライバーを搭載し、従来のオープンエアー型ヘッドホンでは、再現が難しかった低域も、鮮明かつ量感豊かに出力されています。
耳全体を覆う大型のイヤーパッドは、滑らかなベロア素材を採用しており、上質な肌触りで長時間のモニタリングでも快適な付け心地を維持できます。
サウンドチェック、編集など、長時間にわたる作業に最適なモニターヘッドホンです。
Shure SRH840A-A
構造 | 密閉型 |
感度 | 102dB/mW(1kHz) |
再生周波数帯域 | 5Hz~25kHz |
公称インピーダンス | 44Ω |
入力コネクター | 3.5mmステレオ・ミニプラグ(金メッキ) |
ケーブル | 着脱式、片出し |
質量 | 318g (除ケーブル) |
付属品 | ヘッドホンケーブル:3mカールコード 交換用イヤーパッド(1組) 標準プラグアダプター(金メッキ) キャリングバッグ |
原音のニュアンスを忠実に再現するモニターヘッドホン SHURE SRH840A-A。
高度に調整された周波数特性と、低歪みの40mmダイナミックネオジムドライバーにより、豊かな低音域、クリアな中音域、伸びのある高音を再現します。
また、人間工学に基づいたフィット感のあるプレミアムパッド入りヘッドバンドで、長時間の使用でも優れた快適性を発揮します。
緻密なリスニングやスタジオモニタリングに最適なモニターヘッドホンです。