音楽ライブやトークイベントなどで、会場に音を届けるスピーカー。会場全体に聴こえやすい音を届けるには、スピーカーの特性を理解し、適切な位置に設置することが重要です。
一方で、会社や学校のイベントでは、会場の設営やスピーカーの設置などは自分たちで行う必要があるため、適切な位置とはどこなのか?と迷うことも多いでしょう。本記事では、初心者向けにスピーカーの指向性や設置時の注意点などを解説します。
スピーカーの指向性

指向性とは、出力された音の伝わる強さが、方向によって変わる性質のことを指します。例えば、スピーカーの正面に立てば音は大きく聞こえます。逆に、スピーカーの背面に立てば、正面と比べて音は小さく聞こえるでしょう。

このように、スピーカーから出力された音は、方向によって伝わる強さが変わります。このスピーカーの指向性を理解したうえで、会場のどこに設置するか検討する必要があります。
ここでは、パワード・スピーカーのHK AUDIO SONAR 110 Xiを例に見てみましょう。

SONAR 110 Xiは、指向性が 90°× 60°(水平×垂直)となっています。これを図で表すと下図のようになります。

スピーカーの指向性は、その範囲を出るとまったく音が聴こえなくなるわけではありませんが、指向性の範囲内であれば、低域から高域まで欠けることなく、バランスの取れたサウンドを届けられます。
実際に設置する際は、正確に角度を測ることは難しいため、リハーサルなどの場面で実際に音を出して聴こえ方を確認しながら調整しましょう。
スピーカーの高さ

スピーカーの設置に際しては、高さも重要なポイントです。出力された音には、高域ほど指向性が狭くなるという特性があります。
そのため、スピーカーの高さを聴き手の耳の位置に合わせないと、高域が聴こえづらくなり、低域だけが強調されてしまいます。ステージが高い場合や、客席に角度が付いている会場では特に注意が必要です。スピーカーの位置と、聴き手の耳の高さが合っているか十分に確認しましょう。
基本的には、スピーカーの高域を担当するツイーターと、聴き手の耳の高さを合わせることが推奨されています。高さを調整する際は、ツイーターの位置を意識すると良いでしょう。
スピーカーとマイクの位置

スピーカーの配置を決める際に注意すべき点は、音の特性だけではありません。ハウリングが発生しないようにすることも、非常に重要です。
ハウリングとは、マイクとスピーカーを介して音がループすることで、スピーカーから「ブーン」「キーン」といった不快な音が発生する現象です。

ハウリングの基本的な対策は、マイクがスピーカーの音を拾わないようにすることです。
そのため、可能な範囲でマイクとスピーカーの距離を離しましょう。距離を離すことが難しい場合は、それぞれの角度を少し変えるだけでも効果があります。リハーサルなどの場面では、演者とスピーカーを本番と同じ配置にして、ハウリングが発生しないか確認しましょう。
スピーカーの配線

スピーカーの設置場所を決める際は、配線をどう整理するかも合わせて検討しましょう。
人通りがある場所にケーブルを這わせると、邪魔になるだけではなく、ケーブルの断線にもつながります。極力、人通りがないスペースを伝うように配置し、通路などを経由する場合は、ケーブルプロテクターの利用も検討しましょう。
また、スピーカーの配線では電源ケーブルにも注意が必要です。パワード・スピーカーを使用する場合、スピーカーごとに電源が必要となります。

種類 | 特徴 |
---|---|
パワード・スピーカー (アクティブ・スピーカー) | 電気信号を増幅させるパワーアンプを搭載したスピーカー。電源が必要。 |
パッシブ・スピーカー | 電気信号を空気の振動に変換する役割に特化したスピーカー。電源不要だが、別途パワーアンプが必要。 |
会場によってはコンセントの位置が遠く、長距離用の延長ケーブルが必要となる場合があります。ケーブルを這わせる経路をどうするかも含めて、事前に確認しておきましょう。
なお、パッシブ・スピーカーならスピーカーごとの電源は不要です。代わりにパワーアンプを別途用意する必要はありますが、スピーカーの電源に関する制約はなくなります。会場の配置によっては、パッシブ・スピーカーの導入も検討しましょう。
スピーカー・スタンドを使用する際の注意点

スピーカー・スタンドを利用すると、スピーカーの角度や高さを自由に調整できるため、とても便利です。一方で、設置の際には次の点に気を付けましょう。
- 安定した平地に設置すること
- 人通りがある場所には設置しないこと
- スタンドはしっかり固定すること
スピーカー・スタンドには重いスピーカーを設置するので、設置場所には安定した平地を選びましょう。足場が不安定だと非常に危険なため、設置場所には十分留意します。また、足を引っかけることがないように、通路などに設置するのも避けましょう。
スタンドにスピーカーを設置する際はしっかりと固定し、接続に緩みなどがないことを確認します。スタンドの高さを上げると、どうしても不安定になるため、安定して使える範囲の高さで使用することも重要です。三脚タイプの場合は、足をしっかり開いて固定することを忘れないようにしましょう。

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