
2025年6月30日に発売されたHK AUDIOのポータブルPAシステム POLAR 10 MK2。
手ごろなサイズでありながら、ライブやイベントなどさまざまな用途を1台でこなせる高性能なPAコラムスピーカーです。
【コラムスピーカー】複数のスピーカーユニットを縦に配置した柱状のスピーカーのこと
POLAR 10 MK2のおすすめポイントは以下の通りです。
- クリアで自然なサウンドと迫力ある豊かな低音域
- 30秒で組み立て可能な簡単セッティング
- 多彩な入力端子と直感的な操作パネル
- 省スペースに設置できる携帯性に優れたコンパクトボディ
- 木製キャビネットによる優れた耐久性
本記事では、音のプロであるヒビノのベテランスタッフが、POLAR 10 MK2を実際に使用した所感を詳しくレビューします。
POLAR 10 MK2の特長

項目 | 内容 |
---|---|
最大音圧レベル | 130 dB(ピーク) |
周波数レンジ(‐10dB) | 38Hz – 20kHz |
パワーアンプ出力(ピーク) | 2000 W(RMS:500W) |
パワーアンプ形式 | クラスD – バイアンプ |
クロスオーバー周波数 | 180 Hz |
アクティブ保護回路 | 低電圧、過熱、過電流、リミッター |
入力 | ・2x XLRコンボジャック(バランス) ・1x フォン(HI-Z インストルメント) ・2x RCA ・Bluetoothオーディオ |
出力 | Mix Out |
フィルタープリセット・モード | Music、Voice、DJ |
ユーザープリセット | 5 |
EQ | 3バンド、セミパラメトリックEQ(mid) |
システムディレイ | 最大291ms(100m) |
Bluetooth | Bluetooth Ver.5.0 TWS |
エンクロージャー | プライウッド |
仕上げ | ブラック塗装 |
全高 | 208cm |
重量 | 27 kg |
消費電流 | 0.8 A / 100-120V AC |
POLAR 10 MK2は、ドイツのPAスピーカー専門ブランド「HK AUDIO」が販売するオールインワンタイプのポータブルPAシステムです。
前作のPOLAR 10から、パワーアンプと高音域用コラムスピーカーを一新し、大幅にアップデートされています。大型モデルPOLAR 12も、POLAR 12 MK2にアップデートされました。
パワーアンプ出力は最大2,000W(ピーク)、500W(RMS)のクラスD – バイアンプ方式を採用し、最大音圧レベルは130dB(ピーク)。小中規模の会場であれば、十分な音量を確保できます。

コラムスピーカータイプなので音の飛びがよく、広範囲の客席をカバーできる点も強みです。

10インチサブウーファー部分にはマルチチャンネルミキサーが内蔵されており、マイクや楽器を直接接続して使うことができます。

ミキサーの操作パネルは、直感的に操作できるシンプルな設計に加えて、用途に合わせて音質を簡単に変更できる、「音楽」「スピーチ」「DJ(低域拡張)」 のプリセットも用意されています。
PAシステムを使ったことがない初心者の方でも、安心して使えるオールインワンタイプのポータブルPAシステムです。
HK AUDIO【POLAR 10 MK2】ポータブルPAシステム パワードPAスピーカー
POLAR 10 MK2の梱包

POLAR 10 MK2は、サブウーファーとコラムスピーカーが別々に梱包されています。
梱包サイズは大きいものの、一人でも十分持ち運べるレベルです。

中を開けてみると、固定するための緩衝材なども入っており、丁寧に梱包されています。
POLAR 10 MK2の外観

POLAR 10 MK2のサブウーファーには、音質を重視した木製の筐体が採用されています。

重量はありますが、堅牢性は高く、ライブハウスやイベント会場などのハードな現場でも安心して使用できる耐久性を備えています。
また、木材特有の重厚な質感により、高級感のある外観になっています。

コラムスピーカーは、3インチのミッドレンジドライバー×6と1インチのツイーターユニット×1を搭載した縦長のデザインです。

コラムスピーカー下部には、サブウーファーと接続するためのコネクタが内蔵されており、差し込むだけで固定できるようになっています。


コラムスピーカーとサブウーファーは、コネクタを接続するだけで音声も接続されるため、ケーブルは必要ありません。30秒程度で簡単にセッティングできます。
なお、カラーバリエーションは万能に使えるブラックと、ブライダルなどの空間に自然に溶け込むホワイトの2色が用意されています。


POLAR 10 MK2の大きさ・重量

POLAR 10 MK2は、組み立て時で全長208cm、総重量27kg。
縦に長い構造になっており、横幅は一般的な空気清浄機と同程度なので、省スペースで設置することができます。

■サブウーファーのサイズ
寸法(W×H×D) | 37×56×48cm |
重量 | 19.5kg |
高さについては、スピーカー部分がコラムスピーカーとスペーサーの2段構成になっており、スペーサーを挟むかどうかで調整することができます。

■コラムスピーカー
寸法(W×H×D) | 11×83×13cm |
重量 | 4.8kg |
■スペーサー
寸法(W×H×D) | 11×77×13cm |
重量 | 2.8kg |
スペーサーを間に挟むと全長208cmとなり、一般住宅ではエアコン設置部分と同程度の高さになります。

スペーサーを挟まず、コラムスピーカーとサブウーファーを直接接続すると、高さは約130cm程度に収まります。

スピーカーの高さは、聴衆の頭の高さと同程度になるように設置するのがおすすめです。
スタンディングのイベントではスペーサーを挟み、着席のイベントではスペーサーを挟まずに設置するなど、会場の状況によって調整しましょう。
なお、POLAR 10 MK2は組み立て時で総重量27kgと、同サイズのポータブルPAシステムの中では重たい部類に入ります。
これは、音質重視でサブウーファーに木製の筐体を採用しているためです。

サブウーファー単体では19.5kgなので、コラムスピーカーと分割すれば、一人でも十分持ち運び可能です。
POLAR 10 MK2の付属品
POLAR 10 MK2には、以下の付属品が同梱されています。
- サブウーファーボックス保護カバー
- コラムスピーカー用パッド入りバッグ
- 電源ケーブル
- 取扱説明書
サブウーファーとコラムスピーカーには、それぞれ専用のケースが付属しています。

コラムスピーカー用パッド入りバッグは、コラムスピーカーとスペーサーの両方を収納することができます。どちらも使い勝手がよく、携帯性に優れています。
電源ケーブルは、3芯タイプが付属しています。

2芯への変換アダプターは付属しないため、必要な方は別途用意しましょう。
取扱説明書は、英文のクイックスタートガイドのほかに、和文の取扱説明書が付属しています。

和文の取扱説明書は、各機能をイラスト付きでわかりやすく説明されているため、初心者も安心です。
HK AUDIO【POLAR 10 MK2】ポータブルPAシステム パワードPAスピーカー
POLAR 10 MK2をレビュー

ここからは、POLAR 10 MK2を使った所感をレビューします。
POLAR 10 MK2は、コンパクトなボディから、驚くほどパワフルなサウンドが出力されます。
加えて、本体の操作パネルはシンプルながら、見やすいディスプレイで細かく音の調整もできるようになっています。本章では、各機能を具体的に解説します。
クリアでバランスの取れたサウンド

POLAR 10 MK2は、クリアで歪みの少ないバランスの取れたサウンドが特長です。
コラムスピーカーから出力される高音域は抜けが良く、存在感がしっかり表現されます。
特に、声が明瞭で聴き取りやすいため、音楽ライブやスピーチなどの用途に適していると感じました。
スペーサーを挟んで高い位置にコラムスピーカーを設置すると、音が耳にダイレクトに届くので臨場感が違います。
遠く離れても、各帯域でバランスの取れた状態で音が届いており、コラムスピーカーならではの強みが存分に発揮されています。

そして、10インチのサブウーファーは、サイズ感以上に豊かで迫力のある低音を再生します。コンパクトなボディから、体の芯まで響く迫力のあるキックやベースが鳴るので驚きです。
サブウーファーは、4チャンネルミキサーに個別のつまみが用意されており、音量を細かく調整することができます。

Subのつまみを左一杯に回すと、サブウーファーのレベルは0になります。
取扱説明書では、0dBの位置にあわせると、コラムスピーカーとサブウーファーの音量が比較的バランスがよいと記載があります。
実際に鳴らした所感では、0dBの時点でかなり迫力のある重低音が出力されます。右一杯に回すと、10インチ径とは思えないレベルの強力な低音が出ます。
まずは12時あたりにあわせて、そこから徐々に上げてバランスの取れる位置を探すといいでしょう。
透明感と滑らかさが両立したコラムスピーカーと、迫力ある重低音を出すサブウーファーは、スピーチからクラブサウンドまで幅広い用途で活用できそうです。
豊富な入力端子で幅広い用途に対応
POLAR 10 MK2は、マイクや楽器などを接続できる4つの入力端子が用意されています。
それぞれのチャンネルに番号が振られており、以下の構成になっています。

チャンネル1/2 | XLR(バランス)またはフォンプラグのどちらも接続できる入力端子。 |
チャンネル3 | ギターやベースなど、ハイインピーダンス出力の楽器を直接接続できる入力端子。 |
チャンネル4 | 音楽プレーヤー、スマートフォンなどを接続する入力端子。Bluetoothにも対応。 |
チャンネル1/2は、主にマイクを接続する入力端子となっており、ファンタム電源の供給にも対応しています。
つまみの上部にある感度切替スイッチで、インピーダンスを切り変えることでキーボードや音楽プレーヤーなどを接続することもできます。

チャンネル3は、エレキギターやベースなどのハイインピーダンス出力(Hi-Z)の楽器を直接接続できる入力端子です。
そして、チャンネル4は音楽プレーヤー、スマートフォンなどを接続できるRCAピンジャックです。Bluetoothで接続された機器も、チャンネル4に接続されます。

一度、Bluetoothで接続された機器は、2回目からは自動でペアリングされます。イベントで使用する端末は、事前にペアリングしておくと便利です。
POLAR 10 MK2は4チャンネルに対応しており、うち2つがXLRとフォンプラグ両対応のコンボタイプを採用しているため、弾き語り、ミニライブ、トークイベントなど幅広い用途に対応できます。
さらに、ミキサーの左上にはUSB-Cポートがついており、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器を充電できます。

Bluetoothで使うスマートフォンの電池が切れそうなときでも、その場で充電できるので安心です。
こういった細かい機能が充実している点も良いですね。
基本操作は直感的でわかりやすい

POLAR 10 MK2の4チャンネルミキサーは、機器を接続して該当するつまみで音量を調整するというシンプルな構成になっています。
直感的に操作できるので、PA機器を触ったことがない方でも安心です。
また、3つのサウンドモードを選択することで、イベント内容にあわせた音質に変更することができます。
モード | 概要 |
---|---|
MUSIC | 一般的なライブ用途や、あらゆる音楽の再生に適したモード。 |
DJ | 低音域が増強される。DJプレイやエレクトロミュージックのイベント・パーティに最適なモード。 |
VOICE | スピーチやトークイベントに適したモード。 |
サウンドモードの変更はディスプレイ操作が必要ですが、画面も見やすく、操作も簡単です。

さらに、音質を細かく調整したい方向けに、各チャンネルで3バンドEQ機能を備えています。

こちらもディスプレイ操作で、簡単に調整できます。
設定した内容は、5つまでプリセットに保存して素早く呼び出せます。
操作性も良いので不満はあまりないものの、スマートフォンから遠隔操作できると、なおよかったですね。
HK AUDIOのパワードPAスピーカー SONARシリーズは、専用アプリで遠隔操作可能ですが、POLAR 10 MK2は遠隔操作には対応していません。
組み立ては簡単スピーディー

サブウーファーとコラムスピーカーの接続は、内蔵コネクタを差し込むだけなので非常に簡単です。30秒あれば、組み立ても解体も完了します。
POLAR 10 MK2で新開発されたコネクタは、差し込むだけでロックされ、ぐらつくこともなく安定しており、倒れる心配もありません。

本体の総重量は27kgと、同サイズのポータブルPAシステムと比べて重たいですが、簡単に解体できるので、軽自動車などに搭載して運ぶことができます。

現場搬入後のセッティングもスピーディーに行えるので、1台持っておくと活躍する場面は多いでしょう。
同価格帯製品との比較
同価格帯のポータブルPAシステムである、「YAMAHA DXL 1K」と「JBL IRX ONE」とも比較してみましょう。

3製品とも、10万円台で買えるコンパクトでオールインワンタイプのPAシステムです。
まずは、3製品のスペックを比較してみましょう。
HK AUDIO POLAR 10 MK2 | YAMAHA DXL 1K | JBL IRX ONE | |
---|---|---|---|
最大音圧レベル | 130dB | 125dB | 118dB |
周波数レンジ (-10dB) | 38Hz – 20kHz | 37 Hz – 20 kHz | 40 Hz – 20 kHz |
パワーアンプ出力 | ピーク:2,000W RMS:500W | RMS:1,100W | ピーク:1,300W |
LFドライバー | 10インチ | 12インチ | 8インチ |
HFドライバー | 3インチ×6 | 1.5インチ×10 | 2インチ×6 |
Bluetooth | 5.0搭載 | なし | 5.0搭載 |
入力 | 4ch | 2ch | 3ch |
システム重量 | 27kg | 23kg | 15.6kg |
価格(税込) | 129,800円 | 135,799円 | 141,900円 |
3製品を比較すると、それぞれ特長が異なるのがわかります。
- POLAR 10 MK2…全体的にハイスペックで価格が安い
- DXL 1K…RMSが一番高く、LFドライバーも大きい
- IRX ONE…他2製品よりスペックは劣るが、コンパクトで軽い
総合力とコストパフォーマンスでは、POLAR 10 MK2が一歩リードしています。
対して、携帯性では軽量なIRX ONEが優れていますね。
それぞれ良さがあるものの、以下のような方にはPOLAR 10 MK2をおすすめします。
- 一人で運べるなら重量はあまり気にしない
- トータルのスペックで優れている製品を選びたい
- 複数の機材を接続するので、入力チャンネルは多い方が良い
HK AUDIO【POLAR 10 MK2】ポータブルPAシステム パワードPAスピーカー
POLAR 10 MK2はどんな用途に向いている?

ここまでレビューした内容を踏まえると、POLAR 10 MK2は以下のような場所での使用に適しています。
- カフェ・レストラン
- 会議室・セミナー会場
- 教会・結婚式場
- 学校・多目的広場
- イベントスペース(100名程度)
- ライブスペース(80名程度)
コラムスピーカーは高音の抜けがよく、声が明瞭に聴こえるため、トークイベントや催物に適しています。
そして、10インチ径のサブウーファーは豊かで迫力ある低音域を出力できるので、バンドサウンドやダンスミュージックなどの音楽イベントにも適しています。
このように、小中規模のイベントで万能に使えるのがPOLAR 10 MK2の強みです。
一方、バッテリー駆動には対応していないため、電源の確保が必要となります。
屋外や体育館などで使用する場合は、電源が確保できるか事前に確認しましょう。
POLAR 10 MK2 まとめ

今回は、HK AUDIOのポータブルPAシステム POLAR 10 MK2をレビューしました。
改めて、POLAR 10 MK2のおすすめポイントをまとめると以下の通りです。
- クリアで自然なサウンドと迫力ある豊かな低音域
- 30秒で組み立て可能な簡単セッティング
- 多彩な入力端子と直感的な操作パネル
- 省スペースに設置できる携帯性に優れたコンパクトボディ
- 木製キャビネットによる優れた耐久性
コンパクトながらパワフルなサウンドで、1台でさまざまな用途に対応できるポータブルPAシステムです。