PAにおけるミキサーの役割と使い方を徹底解説!

音響機器の基礎知識

マイク、ギター、キーボードなど、複数の音をまとめて整理し、スピーカーから音を出すために必要となるミキサー。ライブハウスやリハーサルスタジオなどには欠かせない音響機器です。

最近では、会社や学校等のイベント、ライブ配信などでミキサーが使用されることも多く、基本的な使い方をマスターしておくとさまざまシーンで役に立ちます。本記事では、ミキサーの役割と基本的な使い方について解説します。

ミキサーの役割

ミキサーとは、マイクや楽器から入力された複数の音声信号を取り込み、適切なバランスにまとめてから出力する音響機材です。

入力された信号の音量バランスを調整するだけではなく、EQ(イコライザー)などのエフェクトを使って聴きやすい音を作ることができます。

ギターやベースは専用のアンプを使って音を鳴らすことが多いですが、ボーカルやコーラスは、マイクごとにアンプやスピーカーを用意するのが大変で非効率です。そこで、ミキサーを使って音を1つにまとめてからスピーカーに送ります。

ミキサーを活用することで、さまざまな音をバランスよく聴きやすい音で、会場全体に届けることができます。

ミキサーの機能

PAで使用するミキサーには、さまざま端子やつまみがついています。一見、複雑で難しい印象を持ってしまいますが、各セクションの機能を理解すれば簡単に扱うことができます。

本章では、アナログミキサー「Soundcraft EFX12」を例に、各セクションの名称と機能を解説します。本記事を参考に実物のミキサーに触ってみると、より理解を深めることができます。

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入力エリア

さまざまな入力端子が配置されているエリアです。マイク、エレアコ、キーボードなどの楽器を接続します。

各チャンネルにはマイク入力(XLR入力)、ライン入力(標準フォーン入力)が搭載されています。

マイクはマイク入力に接続し、ギター・キーボードなどの楽器はライン入力に接続する場合が多いです。

写真のSoundcraft EFX12は、XLR接続と標準フォーン接続に対応したモノラル入力チャンネルが12個、標準フォーン接続に対応したステレオ入力チャンネルが2つ用意されており、多数の信号をミックスすることができます。

GAIN(ゲイン)

接続したマイクや楽器の入力ゲイン(GAIN)を調整するエリアです。音量調整する際はフェーダーに頼りがちですが、事前にゲインで音声信号を適切なレベルまで増幅することが重要です

ゲインによる信号の増幅が不十分だと、フェーダーで音量を上げたときに不要なノイズまで大きくなってしまいます。逆にゲインを過度に上げると音が割れてしまい、この段階で発生した音割れはフェーダーで調整しても解消できません。

このように、クリアで聴き取りやすい音声信号を出力するためには、ゲインの調整が重要となります。

EQ(イコライザー)

特定の周波数をブースト(増幅)、またはカット(減衰)して、音質を補正するエリアです。

Soundcraft EFX12は、チャンネルごとに高域(HF)、中域(MF)、低域(LF)の3バンドのEQを搭載しています。また、中域(MF)については中心周波数を調整できるつまみがついています。

例えば音がモコモコしているように感じられた場合、EQで低域を少しカットすることにより、聴き取りやすく、スッキリとした存在感のある音を作ることができます。

AUX(エーユーエックス)

ステージ・モニターなどを接続する、AUX出力に送る信号のレベルを調整するエリアです。AUXILIARY(オグジュアリー)とも呼びます。

一般的なライブステージにおいては、客席に向けて音を出すメインスピーカーと、演者が自身の音を確認するためにステージ上に設置するステージ・モニターがあります。AUXエリアでは、ステージ・モニターに出力する音を調整できます。

例えば、ボーカル用のステージ・モニターにボーカルの音声だけを出力したい場合、ボーカルマイクが接続されたチャンネルのAUXを右に回します。このように、AUXを使うことで、ステージ・モニターに出力したいチャンネルの音量を個別に調整することができます。

特に大規模なPAシステムでは、ステージ・モニターが複数存在し、それぞれ個別で管理・調整する必要があるため、AUXの理解と活用は必要不可欠です。

FX

各チャンネルで、FXチャンネルに出力する信号のレベルを調整します。FXチャンネルはリバーブなどのエフェクトを適用するチャンネルです。

ボーカルなど、リバーブをかけたいチャンネルでFXのつまみを調整し、FXチャンネルに信号を送ります。

PAN(パン)

2本のスピーカーを使ってステレオで出力する際に、各チャンネルの音を左右のスピーカー間のどの位置に定位させるか設定します。

つまみを「0」の位置に合わせると、信号は左スピーカーと右スピーカーの両方に同一のレベルで出力されます。左に回しきると、左スピーカーにのみ出力され、そこから右方向に回していくと、それに従って音像が右に移動していきます。

各チャンネルの音が被らないように、左右のスピーカーに振り分けて整理することで、全体の音が聴きやすくなります。

PFL/MUTE(ミュート)

PFLはプリフェーダーリッスンの略称で、PFLスイッチを押したチャンネルの信号だけを、モニター出力とヘッドホン出力に送る機能です。接続された楽器から、ミキサーに信号が届いているかチェックする際などに使用します。

MUTE(ミュート)はスイッチを押したチャンネルの信号をOFFにできる機能です。使用していないマイクなど、一時的にスピーカーから音を出したくない状況で便利な機能です。

チャンネル・フェーダー

各チャンネルから、後述するマスター・フェーダーに送る信号のレベルを調整するエリアです。フェーダー横のメモリは、0の位置が基準の音量となるように入力ゲインのつまみを調整し、イベント中の細かい音量調整はフェーダーで行います。

なお、前述のFX、PFLについてはチャンネル・フェーダーによる音量の影響を受けません。これをプリフェーダーと呼びます。プリ(PRE)は「~の前」を意味する言葉で、プリフェーダーはフェーダーの前、つまりはフェーダーの影響を受けないことを意味します。

逆にチャンネル・フェーダーの影響を受けることをポストフェーダーと呼びます。ポスト(POST)は「~の後」を意味する言葉で、ポストフェーダーはフェーダーの後、つまりはフェーダーの影響を受けることを意味します。

Soundcraft EFX12のAUXは、プリフェーダーとポストフェーダーを一括で変更できるようになっています。

ライブステージにおいては、AUXはプリフェーダーで運用したいことが多い一方、外部エフェクターを接続する際はポストフェーダーが一般的です。

プリフェーダーとポストフェーダーを正しく理解して使い分けることができると、さまざまな現場で、柔軟に対応することができます。

FXコントロール(エフェクト)

FXチャンネルの音量、内蔵されているエフェクトのタイプやパラメーターを調整するエリアです。Soundcraft EFX12ではLexicon社製デジタルエフェクターが搭載されており、細かく制御できるようになっています。

各チャンネルに配置されたFXつまみでFXチャンネルに信号を送り、FXチャンネルでまとめてエフェクトを適用します。そして、FXチャンネルのフェーダーでエフェクトを適用した信号のレベルを調整します。

「ボーカルだけリバーブを強くしたい」など、個別のチャンネルだけエフェクトの効きを調整したい場合は、該当するチャンネルのFXつまみを調整して、FXチャンネルに送る信号のレベルを変更しましょう。

マスター・フェーダー

メインスピーカーを接続する、マスター出力に送る信号の最終的な音量を調整するフェーダーです。前述のチャンネル・フェーダー、FXコントロールなどで調整した信号がマスター・フェーダーに送られます。

マスター・フェーダーでは、全体の音量を一括で上げ下げできます。逆に各楽器の音量バランスを個別に調整したい場合は、各チャンネルのチャンネル・フェーダーで調整します。

出力エリア

さまざまな出力端子が配置されたエリアです。スピーカー、ステージ・モニター、ヘッドホンなどを対応した端子に接続します。

おわりに

ミキサーの仕様や各機能の名称は、メーカーや製品によって異なりますが、基本的な仕組みや構造は変わりません。マイクや楽器から送られる信号が、どういった流れで調整され、スピーカーで出力されるのかを理解できていると、初めて使用するミキサーであってもすぐに適応できます。

また、AUXやプリフェーダー・ポストフェーダーなどの機能を理解できると、現場での対応力も格段に向上します。複雑でとっつきにくい印象があるミキサーですが、基本的な構造さえ覚えてしまえば、非常に便利な機器です。本記事で各機能を確認しながら、実機を触って勉強すると効率的に機能を理解できるでしょう。


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